2026年8月14日

「マンジャロって、痩せる注射ですよね?」
最近、糖尿病の診察をしていると、そんな質問を受けることが増えてきました。
確かにマンジャロを使うと体重が減る方は多く、ニュースでも報じられることもあり、注目されています。しかし、マンジャロはもともと「ダイエットのための薬」ではありません。
マンジャロは、2型糖尿病の血糖コントロールを改善するためのお薬です。
そして実際に2型糖尿病の治療に使ってみると、血糖値を下げる効果が非常に高く、体重も減少しやすいという、これまでの糖尿病治療薬とは少し違った特徴を持っています。
マンジャロってどんな薬?
マンジャロの一般名は「チルゼパチド」です。
これまで糖尿病治療で使われてきたGLP-1受容体作動薬とは異なり、GIPとGLP-1という2つのホルモンの作用を利用する「GIP/GLP-1受容体作動薬」です。
GIPやGLP-1は、食事をすると腸から分泌されるホルモンで、血糖値が高いときにインスリンの分泌を促す働きがあります。
マンジャロはこの2つのホルモンの作用を利用することで、
・血糖値が高いときのインスリン分泌を助ける
・グルカゴンの分泌を抑える
・胃から食べ物が排出されるスピードを遅くする
・食欲を抑える方向に働く
など、複数の作用によって血糖値と体重の両方にアプローチします。
そのため、「血糖値を下げる」と「体重を減らす」という2つの効果が期待できるのが大きな特徴です。
実際、どのくらい血糖値が下がるの?
海外で行われた大規模な第3相試験「SURPASS-2」では、2型糖尿病の患者さん約1,900人を対象に、マンジャロ(チルゼパチド)とセマグルチドを比較しました。
40週間後のHbA1cの平均変化は、
マンジャロ5mg:−2.01%
マンジャロ10mg:−2.24%
マンジャロ15mg:−2.30%
でした。
比較されたセマグルチド1mgでは−1.86%だったため、マンジャロの3つの用量はいずれもHbA1cをより大きく低下させました。
もちろん、これは臨床試験の平均値ですので、実際の効果には個人差があります。
それでも、HbA1cを2%以上低下させる可能性があるというのは、糖尿病治療薬として非常に大きな効果といえるでしょう。
体重も減るのがマンジャロの特徴
そして、もう一つ注目されているのが体重への効果です。
同じSURPASS-2試験では、40週間での体重変化は、
マンジャロ5mg:−7.6kg
マンジャロ10mg:−9.3kg
マンジャロ15mg:−11.2kg
でした。
セマグルチド1mgでは−5.7kgだったため、マンジャロではより大きな体重減少が認められました。
「血糖値も下がって、体重も減る」
この2つを同時に期待できることが、マンジャロが糖尿病治療の中で注目されている大きな理由の一つです。
「痩せるための薬」ではありません
ここはとても大切なポイントです。
日本でマンジャロが承認されている効能・効果は**「2型糖尿病」**です。
美容やダイエットだけを目的として使用する薬ではありません。マンジャロは医師の診察のもと、糖尿病の状態やこれまでの治療、体重、合併症などを総合的に考えて使用する処方薬です。
また、マンジャロは「使えば必ず痩せる」「使えば糖尿病が治る」という薬でもありません。
糖尿病治療の基本は、食事療法や運動療法です。そのうえで血糖コントロールが十分でない場合などに、患者さん一人ひとりの状態に合わせて薬を選択していきます。
副作用はないの?
効果が大きい一方で、注意しておきたい副作用もあります。
特に多いのは、
・吐き気
・下痢
・便秘
・嘔吐
・食欲低下
などの消化器症状です。
SURPASS-2試験でも、吐き気や下痢、嘔吐などの消化器症状が主な副作用として認められ、多くは軽症から中等症でした。
そのため、マンジャロは最初から高い用量を使用するのではなく、通常は2.5mgから開始し、4週間後に5mgへ増量します。その後も患者さんの状態を見ながら、必要に応じて段階的に増量していきます。
糖尿病治療は「血糖値を下げるだけ」ではありません
糖尿病の治療で大切なのは、HbA1cを下げることだけではありません。
血糖値、体重、血圧、コレステロール、腎臓の状態、心臓や血管のリスクなどを総合的に考えながら、その人に合った治療を選ぶことが重要です。
マンジャロは、血糖値だけでなく体重にも大きな効果が期待できるため、2型糖尿病の治療選択肢を大きく広げた薬の一つだと私は考えています。
ただし、すべての糖尿病患者さんにマンジャロが適しているわけではありません。
「自分にはマンジャロが合っているのかな?」
「今の薬から変更したほうがいいのかな?」
「副作用が心配……」
そんな疑問があれば、ぜひ糖尿病専門医にご相談ください。
当院では、血糖値だけを見るのではなく、体重や生活習慣、これまでのお薬の効果や副作用なども含めて、一人ひとりに合った糖尿病治療をご提案しています。
ぜひお気軽にご相談ください。